今回は、登山届について説明していきます。
登山届とはそもそもどのようなものなのか。必ず提出しなければいけないのか。
そして、登山届の具体的な出し方や、便利なアプリも紹介していきたいと思います。
登山届とは
登山届とは、そもそもどのようなものを指すのでしょうか。
公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会では、登山届を次のように説明しています。
「登山は計画から始まります。まず、登山地域などの情報を収集して、目標とする山やルートやメンバーを決め、計画を立ることが登山の第一歩となります。計画では装備・食糧・日程などのほか、危険予測などイメージトレーニングを行いエスケープルートなどを確実にします。そして、計画の内容を簡潔にまとめ、登山計画書を作成します。
(中略)
登山計画書には、登山者の氏名、年齢、連絡先、登山の予定と携行する装備と食糧等の量などを記入します。登山計画書を関係へ提出することから登山届とも言います。」
引用:公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会
登山を行う前には、目標とする山やルートやメンバーを決め、計画を立てると思います。
その内容を計画書としてまとめ、関係機関に提出するものを「登山届」と呼んでいるようです。
では、なぜ登山届を出す必要があるのでしょうか?
それは主に次のような理由です。
・計画に無理がないかどうかを見直す機会ができ、遭難の予防となる。
登山届の義務化|登山届の提出が必要な山
では、登山届は、登山をするときに必ず提出しなければいけないのでしょうか。
2022年10月現在では、必ずしもすべての山で提出が求められているわけではありませんが、一部の地域では登山届の提出が義務化されています。
例えば、長野県内で指定された登山道(指定登山道)を通行する場合は、登山計画書の届出が必要です。
長野県
登山を行う前は、登山届を提出する必要があるかどうかを確認し、提出が求められている地域では忘れずに提出するようにしましょう。
義務化されていない地域でも、登山届は提出できます。
遭難のリスクを考えれば、むしろ積極的に活用していくのがよいと思います。
登山届の提出の流れ
それでは、登山届の提出の流れを説明していきます。
- 登山計画を立てる
- 登山計画書(登山届)を作成
- 登山届を提出
- 登山実施
- 下山届を提出
①登山計画を立てる
まずは、目標となるコースを決めます。
体力と技術的難易度を踏まえて、適正なコース設定が重要です。
いくつかの県では、登山者の山岳遭難を防止するため「山のグレーディング」を行っています。
これは、体力度と技術的難易度を軸に、それぞれの登山コースの難易度を示したものです(長野県)。
このような情報をもとに、自分の体力や技術に見合ったコースを選んでいきます。
コースが決まったら、次は情報収集です。
最も正確なのは、ガイドブックや登山地図(山と高原地図など)の情報でしょう。
こちらは定期的に情報が更新されるので、実際に登山に行く場合は最新のものをそろえるようにしましょう。
また、最近では、ヤマレコ、ヤマケイ、YAMAPなどの登山サイトなどから情報を得る人も多いと思います。
最新の情報が得られるという点で利点も多いですが、一方で情報提供者の主観的な情報というデメリットも持ち合わせています。
基本は、最新のガイドブックや登山地図で情報収集し、その他の詳細な部分などを登山サイトなどで補完するという使い方がよいと思います。
情報収集が済んだら、次は行動予定を決めます。
行動予定はメンバー、日程、タイムテーブル、宿泊などを詳細に決定していきます。山では天候など不確定要素が多いので、行動予定を決める際に重要なのは「余裕をもつこと」です。
最悪の場合を想定し、エスケープルートも確保しておきたいところです。
行動予定まで決まったら、最後に装備と食料計画を立てます。
装備と食料計画については、また別の機会に詳しく説明したいと思います。
②登山計画書(登山届)を作成
登山計画を立てたら、次はその内容を「登山計画書(登山届)」にまとめます。
登山計画書(登山届)を作成する際に、最低限記載するべき項目は下記の通りです。
- 所属するグループ
- 所属するグループの代表者と連絡先
- 救助体制の有無と非常時連絡先
- リーダーおよびメンバーの氏名、生年月日、性別、血液型、現住所、電話番号、それぞれの非常時連絡先
- 登山期間
- 日程
- 予備日の有無
- 最終下山日時
- 食料計画
- 装備内容 など
登山計画書(登山届)は決まった様式でなければいけないということはありませんが、日本山岳・スポーツクライミング協会などからフォーマットも出ていますので、そちらを活用するのが楽ですし、確実です。
登山届のフォーマット(日本山岳・スポーツクライミング協会)
③登山届を提出
1つは「自治体・警察」です。
登山届の大きな役割が「遭難した場合に、捜索に役立つ」ということなので、登山届は基本的には「自治体・警察」に提出するものと理解してよいと思います。
提出方法としては、持参、登山届ポスト、郵送、FAX、電子申請サービスなどがあります。
2つ目は「みなし団体」です。
これは「登山計画書の届出先とみなす団体」のことで、Compass(コンパス)やYAMAPがその団体の1つとして認識されています。
参考:長野県
みなし団体は、それぞれの地域の自治体・警察と連携しており、必要に応じて情報を共有する体制となっています。
提出方法としては、オンライン上でWebページやアプリから登録します。
また、ヤマレコなどはみなし団体ではないですが、Webページやアプリで作成した登山計画をボタン1つでCompass(コンパス)に提出することができます。
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3つめは、「家族や友人」です。
家族や友人への登山届の提出は必須ではありませんが、万が一遭難などあったときはより早く対応できる可能性が高まります。
できる限り、家族や友人に登山計画を知らせてから行くようにしましょう。
Compass(コンパス)やYAMAPなどから登山届を提出する方法がスムーズかと思いますが、自治体・警察と連携していない地域もあるので注意が必要です。
登山をする地域の情報をよく確認して、登山届の提出先や提出方法を選択しましょう。
④登山
登山をするときは、登山計画を持っていきましょう。
せっかく計画を立ててもそれを役立てないと意味がありません。
登山仲間にも共有しましょう。
⑤下山届を提出
下山届の提出は、その地域によって異なるようです。
Compass(コンパス)は下山通知を行う必要があります。下山未確認の場合は、警察に連絡がいくシステムになっているので、下山後には必ず通知を行うようにしましょう。
まとめ
今回は、登山届について解説しました。
まとめに移ります。
・登山届を提出することにより、遭難した場合の捜索に役立つ。また、計画に無理がないかどうかを見直す機会ができ、遭難の予防となる。
・一部の地域では登山届の提出が義務化されている。
・登山届提出の流れは、「①登山計画を立てる」→「②登山計画書(登山届)を作成」→「③登山届を提出」→「④登山実施」→「⑤下山届を提出」
・登山届の提出先は、大きく分けて「自治体・警察」、「みなし団体」、「家族や友人」の3つ。登山をする地域の情報をよく確認して、登山届の提出先や提出方法を選択する。
・Compass(コンパス)は下山通知を行う必要がある。
「登山届の提出の流れ」項参考:
山田哲哉, 『縦走登山』, 株式会社山と溪谷社, 2013年, p.37- p.48.