動物繊維の種類

メリノウールとは|普通のウールとの違いは?すぐれた特徴を細かく解説!

登山やハイキングの服によく用いられているメリノウールっていったいどんなもの?
普通のウールとは何が違う?

 

メリノウールという言葉は、登山服を選ぶときによく見かけると思います。
登山やハイキングでは、時に過酷な環境に身を置かなければいけない場面があります。
そのときに、服の特性を知って選んでいるかどうかで安全性が大きく変わってきます。

 

メリノウールとはそもそも何か。
メリノウールの優れた特徴やデメリットについて、詳しく解説していきます。

 

ウールとは

ウールは羊の毛を原料とする動物繊維です。
動物繊維には、ヤギの毛を原料とする「カシミヤ」やウサギの毛を原料とする「アンゴラ」、カイコの繭を原料とする「絹」などがありますが、その中でも最も多く使用されているのがウールです。

動物繊維の種類

羊の牧羊は約8000年前に始まり、紀元前2200年頃メソポタミア南部で、刈り取った羊毛で初めて毛織物が作られたといわれています。その後、良質な羊毛を得るために、羊の品種改良が進んでいきます。(※参考1)

 

メリノウールとは

現在、羊は全世界で約3000種いると言われていますが、その中でも良質なウールが得られる品種として有名なのが「メリノ種」です。
メリノ種は12世紀にスペインで生まれた羊で、このメリノ種の羊毛から得られる繊維を「メリノウール」と呼んでいます。
メリノ種が誕生した当時はスペインからの輸出が禁止されていましたが、その後18世紀に解禁され、主産地はオーストラリアやニュージーランドなどの南半球に移っていきました。(※参考1)

 

メリノウールと普通のウールとの違いは?

昔から登山では、ウールの服は定番アイテムとして重宝されてきました。
ウールは、保温性、吸湿性、保温性などに優れた繊維なので、その点が登山というシチュエーションに合っていたのです。

 

しかし、従来のウールには大きな欠点がありました。
それが肌ざわりです。
従来のウール製品の繊維は太かったため、直接肌に着るとチクチクしていました。
一般的に、繊維の太さが30μmより太いものが5%以上含まれていると、チクチク感じるそうです。

 

その点、メリノウールは他のウールに比べて繊維がとても細いので、肌ざわりがよく、チクチクを感じにくいのです。
雑種のウールの直径が24~42μmの太さなのに対して、メリノウールは直径17~25μmほどです。

 

動物繊維の中でも高級とされるカシミヤの繊維の直径が12~20μmなので、それにかなり近い数値と言えます。(※参考2)

動物繊維の太さ

 

メリノウールのランク

メリノウールはウールの中でも高品質なものとして認識されていますが、メリノウールの中でもランク付けがなされています。
繊維の太さによってランク付けされ、より細い繊維が高級と言われています。(※参考3)

メリノウールのランク

例えば、モンベルの「スーパーメリノウール L.W. ラウンドネックシャツ」という商品は、18.5μmの太さの繊維が使用されています。
また、ニュージーランドに拠点を置くアイスブレーカーで使用されるのは、太さ17~19μmという高品質のもので、メリノウール専門メーカーとしてのこだわりを感じます。
ちなみにユニクロの「エクストラファインメリノクルーネックセーター」という商品では、19.5μmの「エクストラファインメリノ」が使用されています。高品質だけど値段は安く、かなりお得という印象です。

 

メリノウールの優れた特徴

メリノウールには優れた特徴がいくつもあります。

メリノウールの優れた特徴

 

ソフトな肌触り

メリノウールの特徴はなんと言っても、ソフトな肌ざわりにあります。
肌ざわりは、主に繊維の太さによって決まります。
上質なメリノウールは、繊維の太さがカシミヤと匹敵するものもあり、とても肌ざわりがよいです。
ウールはチクチクするから苦手という人も、繊維の細い上質なメリノウールであれば気にならないかもしれません。

 

優れた吸湿性

メリノウールの特徴として挙げられるのが、優れた「吸湿性」です。
身体から出る汗は、「気体」として存在するものと、「液体」として存在するものがあります。

汗の種類

気体の状態の汗を吸い込む性質のことを「吸湿性」と言います。
メリノウールはこの吸湿性に優れています。
メリノウールの繊維の表面には、「スケール」と呼ばれる鱗状の構造があります。

 

スケールは服の内側に発生した汗に反応して開き、繊維の内側に湿気を取り込み、大気中に放出されます。
このスケールは温度や湿度によって開閉し、理想的な温度調節を可能にしてくれます。

メリノウールのスケールの特性

 

濡れても落ちない保温性

メリノウールの繊維の表面にあるスケールには、水をはじく性質があります。
なので、汗で濡れてしまってしても、繊維の内側に汗をため込みながら、繊維の表面はドライに保ってくれます。
そのおかげで汗冷えが起こらず、保温性を保ってくれます。

 

抗菌性と防臭性

メリノウールは天然繊維のため、免疫作用による抗菌作用が備わっており、悪臭の原因となる細菌の増殖を防ぎます。
さらに、匂いのもととなる分子を繊維内に封じこめるため、防臭性にも優れています。

 

UVプロテクション

アイスブレーカーというメーカーのメリノウールのUPF(紫外線保護指数)は、淡色でも15以上、中間色でも50前後以上あります。
これは、綿や化学繊維より高いプロテクション効果を示しています。

 

「SPFとは、「Sun Protection Factor」の略で、UV−Bに対する防止効果を示すものです。SPFの数値は、日焼け止め化粧品を塗った場合、塗らない場合に比べて何倍の紫外線を当てると、翌日に肌がかすかに赤くなるかを示しています。SPFは2〜50、さらに50以上の場合は「50+」と表示され、数値が大きいほどその防止力が高まります。
引用:kracie

 

屋外での軽いスポーツやレジャーの場合はSPF30以上、炎天下でのスポーツなどには SPF50以上が求められるので、メリノウールは紫外線対策としてもかなり有効と言えます。

 

上記以外にも、メリノウールには優れた特徴がたくさんあります。

  • 静電気が起きにくい
  • 優れた伸縮性
  • お手入れが簡単
  • 再生可能な天然繊維

 

メリノウールのデメリット

それでは、次にメリノウールのデメリットを見ていきましょう。

メリノウールのデメリット

速乾性が低い

さきほども説明したように、メリノウールは繊維の内部に水分を吸収する性質があります。
水分を吸収する能力が高い分、乾きにくいというデメリットもあります。
天然繊維に比べて、速乾性が高いのはポリエステルなどの合成繊維です。

 

夏場に大量に汗をかくような活動のときは、ポリエステルなどの合成繊維の方が向いています。
ただ、速乾性が高いということは、その分体温が奪われるスピードも速いので、シチュエーションに合わせて選択する必要があります。

 

虫に食われやすい

メリノウールをはじめとする動物繊維は虫に好まれるため、虫食いの被害に遭いやすいです。

 

洗濯で縮む場合がある

水につけるとスケールが開き、そのスケール同士が絡まって生地が縮むというメカニズムです。
一度繊維同士が絡み合い縮んでしまったフェルト化してしまうと、元に戻すのは困難なので、洗濯方法は注意が必要です。

 

高価である

ポリエステルなどの合成繊維と比較すると高価です。
気軽に買える値段ではない商品も多くあります。

 

まとめ

今回は、メリノウールとは何か、メリノウールのメリット・デメリットについて、解説しました。
まとめに移ります。

 

・ウールは羊の毛を原料とする動物繊維。
・メリノウールは、メリノ種という品種の羊毛から得られた繊維。
・従来のウール製品の繊維は太かったため、直接肌に着るとチクチクし、肌ざわりがよくなかった。一方、メリノウールは他のウールに比べて繊維がとても細いので、肌ざわりがよく、チクチクを感じにくい。
・メリノウールは繊維の太さによってランク付けされ、より細い繊維が高級と言われる。
・メリノウールの優れた特徴は、「ソフトな肌触り」、「優れた吸湿性」、「濡れても落ちない保温性」、「抗菌性と防臭性」、「UVプロテクション」など。
・メリノウールのデメリットは、「速乾性が低い」、「虫に食われやすい」、「洗濯で縮む場合がある」、「高価である」など。

 

メリノウールはその優れた特徴から、様々なアウトドアのシーンで重宝されています。
まだ持っていないという人は、1枚持っていても損はないです。

 


参考1:ニッケ
参考2:丸昌産業株式会社
参考3:グレートアティーザン

 

[メリノウールの優れた特徴][メリノウールのデメリット]の項

参考:ウールマーク
参考:ゴールドウィン
参考:山と道
参考:グレートアティーザン
参考:yamahack

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