登山ではダウンとフリースどっちを選べばいいの?
登山でミドルレイヤーを選ぶとき、ダウンにするかフリースにするかは悩ましい問題です。
どちらにもメリット・デメリットがあり、一概にこちらがおすすめということはできません。
今回は、ダウンとフリースのメリット・デメリットを整理し、それぞれに適したシチュエーションを解説していきたいと思います。
ダウンとは
ダウンとは、ガチョウやアヒルなどの水鳥に生える綿毛(ダウンボール)のことです。
ダウンボールは水鳥の首から胸の羽の根本にだけ生えている毛です。
高品質なダウンウェアには、このダウンボールと少量の羽(フェザー)が混ぜられています。
フェザーをあえて入れるのは、硬いフェザーを加えることで「体積」を出すためです。
(参考:ホーボージュンら, 『山岳大全シリーズ① 山岳装備大全』, 株式会社山と溪谷社, 2011年, p.91-100.)。
フリースとは
フリースとは、ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタラートから作られた繊維素材のことです。
「1970年代にパタゴニアがはじめに開発したと言われています。
もともとは、北大西洋の漁師がきていた化学繊維パイルのセーターが着想になっており、「濡れても温かい」フリースがつくられました。
最近では速乾吸収性や防風性に優れたモデルもあり、アウトドアでは使いやすい服です。」
引用:ハイカーズ大学
ダウンとフリースの分類
そもそも、ダウンとフリースは登山服において、どのようなカテゴリーに入るのでしょうか。
登山服は、「3レイヤー」という3つの層によって構成されます。
肌に近い方から「ベースレイヤー」、「ミドルレイヤー」、「アウター(シェル)レイヤー」という風に呼ばれます。
ダウンとフリースは、通常は「ミドルレイヤー」に分類されます。
※防風性、防水性を備えたモデルは「アウターレイヤー」に含まれる場合もあります。
ミドルレイヤーは種類が豊富で、代表的なところを挙げると、以下のようなものがあります。
- ロングシャツ
- 山シャツ
- ポロシャツ
- フリース
- ダウン
- 化学繊維インシュレーション(プルマフィル・インサレーション/パタゴニア社、Ventrix Insulation/ザ・ノースフェイスなど)
「保温着」としてのダウン・「行動着」としての「フリース」
「ミドルレイヤー」は、大きく「汗の発散」と「保温性」の2つの役割を担っています。
さきほど紹介したミドルレイヤーが、どのような役割の比重をもっているのかマッピングしてみました。
※あくまでイメージで実際の正確な性能を表すものではありません。
汗の発散に優れている服を「行動着」、保温性に優れている服を「保温着」に分けてみると、次のようになります。
「行動着」は主に行動中に着る服です。動きやすく汗の発散を促してくれる一方で、保温性はそれほど高くありません。
「保温着」は主に食事中やテント泊などの休憩中に着る服です。保温性が高い一方で、汗の発散や動きやすさは「行動着」ほど重視されていません。
薄手のフリースは「行動着」、ダウンと厚手のフリースは「保温着」に分けられます。
ダウンとフリースのメリット・デメリット
ここで、さらにダウンとフリースのメリット・デメリットを整理しておきましょう。
ダウン | フリース(厚手) | フリース(薄手) | |
汗の発散 | △ | ○ | ◎ |
保温性 | ◎ | ○ | △ |
保温性(濡れたとき) | × | ○ | △ |
軽さ | ◎ | △ | ○ |
コンパクト性 | ◎ | × | △ |
伸縮性 | △ | 〇 | ◎ |
ダウンのメリットは「保温性」、「軽さ」、「コンパクト性」です。
ダウンは保温性に優れていて、軽く、圧縮すると驚くほどコンパクトになります。
一方で、汗を発散する能力や伸縮性はそれほど高くないので、行動負荷の大きな活動には不向きです。
また、水に弱く一度濡れてしまうと保温性が一気に落ちてしまい、なかなか乾かないというデメリットもあります。
フリース(薄手)のメリットは「汗の発散」、「伸縮性」です。
このメリットをもつことから、多少汗をかいても行動中もストレスなく着続けることが可能です。
一方で、ダウンと比較すると「保温性」や「コンパクト性」は劣ります。
フリース(厚手)は、ダウンとフリース(薄手)のちょうど中間的な存在です。
「汗の発散」や「保温性」、「伸縮性」など様々な点においてバランスがよいと言えます。
ただ、「コンパクト性」は著しく低く、脱いだときはザック内でとてもかさばります。
ダウンとフリースそれぞれに適したシチュエーション
これまでの解説を踏まえて、ダウンとフリースそれぞれに適したシチュエーション(無雪期)をみていきましょう。
ダウン | 縦走やロングトレイル(休憩中)
秋~春の日帰り登山(休憩中) |
フリース(薄手) | 秋~春の日帰り登山(行動中) |
フリース(厚手) | 冬の日帰り登山(行動中・休憩中) |
ダウンは「保温着」であり、軽量コンパクト性がメリットです。
少しでも軽量でコンパクトなスタイルが好まれる縦走やロングトレイルに向いています。
縦走やロングトレイルではテント泊で休憩時間も長いので、保温性の高いダウンが重宝します。
また、秋~春の日帰り登山の休憩時間に身体が冷えないように着込むのも有効です。
フリース(薄手)は「行動着」であり、汗の発散や伸縮性がメリットです。
多少の汗をかいても着続けることができるので、秋~春の日帰り登山の行動着として活躍します。
フリース(厚手)は「保温着」に分類しましたが、「行動着」の面も持ち合わせています。
しかし、薄手のフリースと比べると保温性が高い分、熱がこもりやすいため、汗をかきにくい冬のゆったりハイクに向いています。
使えるシチュエーションは少し限られているようには思います。
また、一度脱いでしまうとザッグの中でかさばるので、そこは考慮する必要があります。
ダウンとフリースそれぞれに適したシチュエーションを挙げてみました。
購入するときは「行動着」と「保温着」のどちらが欲しいのかを意識することが重要です。
「行動着」が欲しい場合はフリース(薄手)、「保温着」が欲しい場合はダウンがおすすめです。
フリースとダウン両方を購入して、場面に応じて使い分けるのもアリだと思います。
まとめ
今回は、ダウンとフリースのメリット・デメリットを整理し、それぞれに適したシチュエーションを解説しました。
まとめに移ります。
・ダウンのメリットは「保温性」、「軽さ」、「コンパクト性」。水に弱く一度濡れてしまうと保温性が落ちてしまうのがデメリット。
・フリース(薄手)のメリットは、「汗の発散」、「伸縮性」。ダウンと比較すると「保温性」や「コンパクト性」は劣る。
・フリース(厚手)は、ダウンとフリース(薄手)のちょうど中間的な存在。「コンパクト性」は著しく低く、ザック内でかさばる。
・ダウンとフリースそれぞれに適したシチュエーションは、下の図の通り。「行動着」が欲しい場合はフリース(薄手)、「保温着」が欲しい場合はダウンがおすすめ。
ダウン | 縦走やロングトレイル(休憩中)
秋~春の日帰り登山(休憩中) |
フリース(薄手) | 秋~春の日帰り登山(行動中) |
フリース(厚手) | 冬の日帰り登山(行動中・休憩中) |
自分がよく活動する山域や季節、行動パターンを考慮して、ダウンかフリースどちらが合っているかを考えてみましょう。