登山やハイキングをはじめるため、あれこれと悩んでようやく靴を購入。
「次は靴下でも買うか」と靴下コーナーをのぞくと商品がずらり。
何を選んでよいか分からず立ちすくむという人は意外と多いのではないでしょうか。
「靴下なんか、普段履いているやつでいいや」と思う人もいるかもしれませんが、靴下1つで登山やハイキングのパフォーマンスは大きく変わります。
靴下の選び方を間違えれば、マメや靴ずれから凍傷にいたるまで様々なトラブルが発生する可能性があります。
ですから、靴下選びは、登山やハイキングにおいて非常に重要なのです。
今回は、自分にぴったりな靴下をスムーズに選べる方法を解説していきたいと思います。
これを読めば、靴下選びでの失敗をぐっと減らせます。
登山用靴下の役割
靴下は注目されることが少ないですが、軽視できないアイテムです。
靴下1つで登山やハイキングのパフォーマンスが大きく変わるといっても過言ではありません。
まずは、登山用靴下の役割について確認してみましょう。
基本的な役割は、下の5つです。
吸汗発散
登山用靴下の一番重要な役割は「吸汗発散」。
汗を吸い上げ、外部に排出するはたらきです。
ヒトは平常時でも1日に両足でコップ1杯分の汗をかき、登山中の靴の中の湿度は最高80~90%まで上がると言われています(参考:ホーボージュンら, 『山岳大全シリーズ① 山岳装備大全』, 株式会社山と溪谷社, 2011年, p.108-111.)。
この状況が“蒸れ”を生み出すわけですが、蒸れた足の皮膚はやわらかくなり、そこに圧力が加わるとマメや靴ずれなどのトラブルを招きます。
つまり、ウエットな状況になりがちな足をいかにドライに保てるかがポイントとなります。
靴ずれ防止
2つ目の役割は、「靴ずれ防止」です。
靴と足の間のクッション的な役割をはたし、靴ずれを防止します。
ショック吸収
3つ目の役割は、「ショック吸収」です。
重登山靴は、全体的に硬いつくりになっており、特にソールが硬いので、歩くたびに足裏に衝撃が加わります。
重い荷物を背負っていたらなおさらです。
靴下にはその衝撃を和らげるショック吸収の役割があります。
足裏のみ厚みを増してショック吸収を効率よく行うモデルもあります。
保温
4つ目の役割は「保温」です。
足先は身体の末端にあり、血流が低下しやすい部位なので、厳冬期などはとくに保温に注意しなければいけません。
足先の保温は、靴下選びひとつで大きく変わってきます。
また、夏であってもアルプスの高山地帯では冷え込む状況が考えられるので、そのような場所に行くときは保温性のある靴下を選ぶのがベターです。
サポート性能
5つ目の役割は「サポート性能」です。
このサポート性能については、靴下によってはない場合もあります。
よくあるサポート性能の1つとしては、「アーチサポート」。
足裏は、親指の付け根と小指の付け根、かかとの3点で支えられており、その3点がアーチ状の構造で保たれています。
このアーチをサポートする機能がついた靴下は、アーチの構造を保つことで長時間の歩行による疲れを減らしてくれます。
登山用靴下の選び方
登山用靴下の役割を確認したので、本題である選び方についてみていきましょう。
登山用靴下の選び方は、「素材」→「厚さ」→「長さ」→「サイズ」→「その他の機能」の順で決めていくと、よりスムーズに選べます。
登山用靴下の素材
まずは登山用靴下の素材から選んでいきましょう。
登山用靴下によく使用される素材としては、天然素材の「麻」、「ウール」、「シルク」、そして化学繊維の「ポリエステル」、「ナイロン」などがあります。
温暖で行動負荷が大きく、多くの汗を処理する必要があるときは「ポリエステル」。
それ以外のシチュエーションでは、「ウール」が最適と言えるでしょう。
詳しい解説はこちらの記事を参考にしてください。
ベースレイヤーってよく聞くけど、そもそも何? 登山のときはベースレイヤーの上に何を重ね着したらいいの? 登山はアウトドアで活動するものなので、雨や風、冷気などの影響をダイレクトに受けます。 たくさん汗をかき濡れ[…]
登山用靴下の厚さ
次に「厚さ」です。
登山用靴下の厚さには、「薄手」、「中厚手」、「厚手」、「極厚手」などがあります。
登山用靴下の厚さは、履いているシューズにあわせて選ぶのが最適です。
参考:モンベル. “ソックスのラインナップ”. モンベル. https://www.yamatomichi.com/journals/24633/, (参照 2020-09-11)
厚みが増えればクッション性や保温性が高まります。
ローカットのハイキングシューズであればソールも比較的柔らかいので、足への衝撃はそれほど大きくありません。
また、比較的温暖な気候のもと使用されることが多いので、やや薄手のものや中厚手を選ぶことが多いです。
逆に、アルパインブーツなどはソールがかなり硬く、厳冬期に使用されることが多いので、クッション性や保温性の高い極厚手のものなどが選ばれます。
登山用靴下の長さ
次に「長さ」です。
登山用靴下の長さも、履いているシューズにあわせて選ぶようにします。
ポイントは、「登山靴のカットの高さよりも長いものを選ぶ」ということです。
登山用靴下の役割の1つに「靴ずれ防止」がありました。
靴と足の間のクッション的な役割をはたし、靴ずれを防止します。
もし、登山靴のカットの高さよりも短いものを選んだ場合、靴と足が直接触れるので、靴ずれがおこる可能性が高まってしまいます。
そして、登山靴のカットの高さよりも長いものを選べば、その分だけ、靴下が外気に触れる面積を広げることができ、より吸汗発散の効果が高まります。
登山用靴下のサイズ
次に登山用靴下の「サイズ」です。
サイズ選びによって、登山用靴下がきちんと機能するかどうかが決まります。
大きすぎるものを選んだ場合は、肌と触れ合う面積が減って吸汗発散の効果は減るでしょうし、靴ずれの原因になるかもしれません。
逆に、小さすぎるものを選んだ場合は、血行不良を起こしてしまい、体温が保てなくなる可能性もあります。
登山用靴下は、ジャストサイズのものを選ぶようにしましょう。
もし、自分のサイズがMとLのちょうど間にあるような場合は、小さいほうのサイズを選ぶことをおすすめします。
最近は、左右別形状のものや5本指ソックスなど、より足の形にフィットするものが増えてきています。登山用靴下の機能を最大限に生かしたい人は、よりフィットする靴下を選ぶのがいいでしょう。
登山用靴下のその他の機能
最近の登山用靴下には、様々な機能がたくさんついています。
例えば、さきほど紹介した「アーチサポート」。
その他にも足裏に滑り止めがついていて、靴下が靴の中でずれるのを防いでくれるものもあります。
これらの機能は、常に必要ではありませんが、自分の登山ハイキングのスタイルにあった機能を取り入れていけば、より快適になります。
まとめ
今回は、登山用靴下の選び方についてお話しました。
「素材」→「厚さ」→「長さ」→「サイズ」→「その他の機能」の順で選んでいけば、候補はかなりしぼられると思います。
ポイントは、1つの項目に対して、なぜそれを選ぶのかという根拠を明確にしていくことです。
そして、気になった靴下があれば、それを履いて実際に山に出かけてみましょう。
実際に歩いてみると、欲しい機能がより明確になり、自分にぴったりの靴下が見つかるはずです。