登山パンツなんてどれも変わらないように思うんだけど?
丈の長さや生地の素材は何を基準に選んだらいいの?
登山服を選ぶ際は、どうしても上着に目がいきがちですが、登山やハイキング中に動かすのは主に足です。
ですから、パンツの選び方ひとつで登山やハイキングの快適さがかなり変わってきます。
今回は、登山パンツの正しい選び方を解説します。
登山パンツの選び方順
まずは、登山パンツの選び方の順番です。
順番として、「丈の長さ」→「生地の素材」→「生地の厚み」→「機能性」→「デティール」という順です。
この順番で決めていけばスムーズに登山パンツが選べるはずです。
登山パンツの丈の長さ
丈の長さの分類でいうと、「ショートパンツ」、「ハーフパンツ」、「ロングパンツ」、「コンバーチブルパンツ」の4種類があります。
それぞれの特徴と長所、短所を簡単にまとめてみます。
それでは、それぞれの丈のパンツがどのようなシチュエーションに合うのかを考えてみます。
「ショートパンツ」と「ハーフパンツ」は、雪のない季節の舗装や整備された里山トレイルで使用するのが最適です。
樹林帯では草などが足にあたるし、岩などにぶつけてケガするリスクもでてきます。
また、稜線や標高2000m以上のエリアだと強い風に長時間吹かれることもあるので、低体温になる可能性もでてきます。
ただ、パンツの下にサポートタイツなどを履いている場合は、使用できるシチュエーションも少し広がると思います。
「ロングパンツ」は万能で、どのシチュエーションでも比較的合います。
夏場の舗装路や整備された里山トレイルだと、「ショートパンツ」と「ハーフパンツ」の方が快適ですが、ロングパンツも涼しくて蒸れにくいモデルのものが数多くあります。
また、ケガや虫刺されのことを考えると、やはり「ロングパンツ」が無難でしょう。
防風性や保温性に優れたモデルは、積雪期や残雪期に対応できます。
「コンバーチブルパンツ」は、無雪期に幅広く使用できます。
膝あたりにファスナーがついているので、膝下の部分を取り外すことでハーフパンツにすることができます。
普段はロングパンツで歩き、夏場の暑いときはハーフパンツで歩きたいという人におすすめです。
シチュエーションにあわせて長さを変えることができるのですが、ファスナーがある分、重量が増します。
はじめに買う一本を選ぶとすれば、おすすめは「ロングパンツ」です。
汎用性が高く、いざというときにケガや寒さ、害虫などから身を守ってくれるからです。
3シーズン(無雪期)のロングパンツがあれば、色んな場面で使用可能です。
登山パンツの生地の素材
衣類の繊維には次のような種類があります。
そして、登山服としてよく用いられるのがこちらの繊維です。
天然繊維では「麻」「ウール」「シルク」、化学繊維では「ポリエステル」「ナイロン」が比較的よく使用されています。
ちなみに、綿は衣服によく用いられますが、登山やハイキングでは推奨されていません。
これは綿が多くの水を繊維間に吸いあげ、体温を著しく低下される可能性があるからです。
(安田武. 登山用肌着の吸水性に関する考察. 繊維製品消費科学, 1963, 4(3), p. 150 – 152.)
ですから、間違ってもジーンズなどで出かけてはいけません。
登山をはじめたころ、一度ジーンズで行ったことがあるのですが、汗がはりついて膝が上がらないし、汗で冷えるし散々でした。
素材でおすすめなのは「ポリエステル」や「ナイロン」などの化学繊維です。
ウールなどの天然繊維も保温性が高く、汗もよく吸ってくれるのでよい素材なのですが、強度が弱いというデメリットがあります。
登山は足を大きく上げる動作がなんどもあり、岩などで擦れる場面もあるので、一定以上の強度がほしいところです。
その点、ポリエステルやナイロンは強度が強く、摩擦にも強いと言われています。
はじめて選ぶのであれば、「ポリエステル」や「ナイロン」などの化学繊維が安心です。
登山パンツの生地の厚み
生地の厚みは、「厚手(冬用)」、「中厚手(3シーズン用)」、「薄手(夏用)」などというように分かれています。
これは、実際に自分が登山やハイキングにいく時期をみて決めればよいでしょう。
「中厚手(3シーズン用)」を買っておけば、無雪帯はだいたい対応できるのでおすすめです。
ただ、やはり夏場はかなり暑いので、私は「中厚手(3シーズン用)」と「薄手(夏用)」の2つを使い分けています。
登山パンツの機能性
登山パンツに求められる機能性は、主に、「動きやすさ」、「吸水速乾性」、「撥水性」、「防風性」、「保温性」の5つです。
動きやすさ
登山パンツに求められる機能性の中で最も重要なのは、「動きやすさ」です。
登山やハイキングでは何度も繰り返し足を動かします。
ときには大きく足を上げて岩場を登ることがあります。
ですから、「動きやすさ」というのは非常に重要で、どれだけ動きやすいかで疲れ方も大きく変わります。
動きやすさを決める要因は主に、「立体裁断」と「ストレッチ性」の2つです。
「立体裁断」は主に膝部分に施されていて、膝の曲げ伸ばしがストレスなくできるように少し余裕を持ったつくりになっています。
「ストレッチ性」は生地時代が伸びる性能で、横方向と縦方向、もしくは両方向に伸びるモデルがあります。
「動きやすさ」を確保するために、「立体裁断」と「ストレッチ性」はかならず確認し、できれば両方を備えているものを選びましょう。
吸水速乾性
登山やハイキングは運動量が大きいので、冬でも多くの汗をかきます。
服が汗で濡れたままの状態で風にさらされれば、体温はたちまち奪われてしまいます。
ですから、登山パンツは吸水速乾性が高く、汗をかいてもすぐに乾くことが重要です。
「ポリエステル」や「ナイロン」などは速乾性が高いので、そういった点でもおすすめです。
撥水性
登山やハイキングをしていると急な雨に降られることはよくあります。
私の場合、普通の雨であればレインウェアをすぐに着るのですが、小雨だと少し様子をみます。
そういうときに、撥水機能があれば、少々の雨ははじいてくれるのでとても便利です。
また、雨がふってなくても下草が濡れていて、歩いているうちにパンツが水を含んでいることがよくあります。
これも撥水機能があればかなり防げます。
できれば、「撥水性」のあるものを選びましょう。

防風性
防風性は必須ではありません。
ただ、積雪期や残雪期になると必要になります。
また、無雪期でも稜線歩きをする場合や標高2000m以上を歩くときは、強い風にさらされ体温を奪われることがあります。
レインウェアを上に履くことである程度しのげますが、このようなシチュエーションを頻繁に歩く場合は、防風性を備えたものがよいでしょう。

保温性
保温性についても必須ではありません。
ただ、積雪期や残雪期になると必要になります。
無雪期でも稜線歩きをする場合や標高2000m以上を歩くときは、強い風にさらされ体温を奪われることがありますが、保温性までは必要ないかと思います。
無雪期で保温性のあるモデルだと暑くなりすぎる可能性があるからです。
タイツやレインウェアをうまく組み合わせるのがベターだと思います。
登山パンツのデティール
最後に「デティール」です。
登山やハイキングをより快適にするために、1つずつチェックして決めましょう。
ウエスト調節
ウエスト調節はおおざっぱに分けると「バックル」、「ヒモ」の2つが主流です。
どちらもメリットデメリットがあります。
「バックル」は調整が簡単だけど、ザックの腰ベルトに干渉する可能性があります。
「ヒモ」はザックの腰ベルトに干渉することはなくすっきりしていますが、毎回結ばないといけないので少し面倒です。また、ヒモだけだとウエスト部のゴムが緩んだとき、パンツがずり落ちてくることがあります。
ポケット
ポケットで大事なのはファスナーがついているかどうかです。
登山やハイキングは座ったりしゃがんだりする動作が意外と多く、ポケットの中身がずり落ちることがあります。
全てのポケットにファスナーが付いている必要はありませんが、少なくとも一か所はファスナーがついていた方が安心です。
ベンチレーション
登山パンツの中には、ベンチレーションといって、服の中の汗を外に逃がす窓のようなシステムが備わっているものがあります。
夏用のパンツを買うとき、蒸れが気になる人は、ベンチレーションが付いているものを選ぶようにしましょう。
足首のドローコード
足首の部分にドローコードがついているモデルがあります。
ハイキングシューズの上にパンツをかぶせて、ドローコードをしぼることで、シューズの中に小石や水分が入るのを防ぐことができます。
この機能はあればいいかなという程度です。
まとめ
今回は、登山パンツの正しい選び方を解説しました。
まとめに移ります。
・丈の長さは「ショートパンツ」、「ハーフパンツ」、「ロングパンツ」、「コンバーチブルパンツ」の4種類。3シーズン(無雪期)のロングパンツがあれば、色んな場面で使用可能。
・素材でおすすめなのは、強度が強く、摩擦にも強い「ポリエステル」や「ナイロン」などの化学繊維。
・生地の厚みは、「厚手(冬用)」、「中厚手(3シーズン用)」、「薄手(夏用)」など。「中厚手(3シーズン用)」であれば、無雪帯はだいたい対応可能。
・登山パンツに求められる機能性は、主に、「動きやすさ」、「吸水速乾性」、「撥水性」、「防風性」、「保温性」の5つ。「動きやすさ」と「吸水速乾性」、「撥水性」は必須。
・登山やハイキングをより快適にするために、「デティール」もチェック。
納得のいくパンツを見つけて快適ハイクを楽しみましょう!