耐水性試験

登山用レインウェアの耐水性・透湿性って?これさえ知ればもう迷わない!

登山用レインウェアを探していたら「防水性」や「透湿性」って出てきたけど、これって何を表すの?
透湿性20,000 g/m2/24hrs以上ってあるけど、性能がいいのかどうかも分からない…。

 

自分にピッタリな登山用レインウェアを選ぶためには、そのレインウェアがどのくらいの性能を持っているかを理解できるかどうかがとても重要です。

 

今回は、登山用レインウェア選びで特に重要な「防水性」と「透湿性」について、解説していきたいと思います。
「防水性」と「透湿性」が分かれば、レインウェアのスペックが手に取るように分かるようになります。

 

登山用レインウェアの最も重要な機能は「防水性」と「透湿性」

登山用レインウェアに求められる機能はいくつかありますが、中でも最も重要なのは「防水性」「透湿性」です。

 

「防水性」とは、生地に水(雨)がしみこむのを防ぐ性質のこと。
「透湿性」とは、蒸気(汗)を生地の外に逃がす性質のこと。

 

レインウェアだったら、単純に「防水性」だけでいいのでは?
なぜ「透湿性」も必要なの?と思われるかもしれません。

 

例えば、サランラップを肌に巻き付けた状態を想像してみてください。
サランラップを巻いた場所に水がかかっても浸水することはありません。
しかし、自分の汗が外に逃げていかないので、肌は汗で濡れてしまいます。

 

特に登山は運動量が多く、それに伴って発汗量も増えるので、この汗を生地の外に逃がしてやらなければいけません。
もし、汗が逃げずに肌が濡れてしまった場合、条件が悪ければ低体温症になる可能性もあります。

 

というわけで、登山用レインウェアには「防水性」と「透湿性」の両方の機能が求められます。

 

「耐水性」とは

「防水性」とは、生地に水(雨)がしみこむのを防ぐ性質のことでした。
JISという規格では、耐水性・はっ水性・漏水性などの総称を「防水性」としています。

防水性とは

防水性の中でも特に重要なのが耐水性で、「耐水性試験」という試験で評価されます。
この試験は、生地に水圧をかけたとき、どの程度で水が染み出すか評価する試験のことです。

 

試験結果は、耐水圧(mm)で表されます。
この単位は1cm四方の水柱を立てたときに、生地がどのくらいの水圧(高さ)まで耐えられるのかということを表しています。

耐水性試験

実際には、機械を使ってこの水柱を立てたときと同等の圧力を加えていき、水が染み出るまでの値を測っているそうです。

 

登山用レインウェアに求められる耐水圧は?

それでは、登山用レインウェアに求められる耐水圧は、一体どのくらいなのでしょうか?
私は、「20,000mm以上」をおすすめしています。

 

まずは、こちらの表をご覧ください。
こちらは、耐水圧によって、どれくらいの雨に耐えられるのかを示したものです。

  小雨 中雨 大雨
耐水圧 300mm 2,000mm 10,000mm 20,000mm

引用:アメトハレ

 

そして、アウトドアメーカーのONYONE(オンヨネ)のサイトでは、次のように紹介されています。

「天候の変化が激しいアウトドアフィールドでは、突然の大雨や暴風雨に晒されることは珍しいことではありません。ここで着用するレインウェアには20,000mm以上の耐水圧性能を有するものを推奨します。」
引用:ONYONE(オンヨネ)

 

アウトドアでは、突然の暴風雨に遭うこともあるので、「20,000mm以上」をおすすめしているというわけです。

 

では、通常の雨しか降らないという状況であれば、耐水圧は低くてもいいのでしょうか?
実は、それほど単純な話ではありません。
というのも、レインウェアは身体に密着するものなので、身体の部位によっては動くだけで圧力がかかり、そこから浸水する可能性があるのです。
例えば、濡れた場所へ座ったり膝をついたりした場合の圧力は、約2,000~11,000mm程度と言われています。
また、登山の場合は、重い荷物を背負うので、肩や腰部分に圧力がかかり、そこから浸水することもあります。

 

このような理由から、登山用レインウェアを買うときは、どんな人にも耐水圧「20,000mm以上」のものをおすすめしています。

 

「透湿性」とは

「透湿性」とは、蒸気(汗)を生地の外に逃がす性質のことでした。
JISの規格では、透湿性を調べる試験は、A法・B法・C法の3種類があります。
ここでは、最もメジャーな「B-1法(酢酸カリウム法)」について、紹介します。
簡単に言うと、決まった時間内に、生地がどれくらいの量の水蒸気を吸うかという試験です。

透湿性試験

「試験方法
①30℃の恒温装置中に23℃の水が入った水槽を置きます。
②試料裏面が水槽内の水に浸るよう取り付け固定します。
③酢酸カリウム飽和溶液(吸湿材)の入ったカップを測定用補助フィルムで密閉します。
④3の補助フィルム面が試料に接触するよう、倒立させて設置します。
⑤15分放置します。
⑥試料を通過して酢酸カリウム飽和溶液が吸湿した水蒸気量を測定します。」
引用:一般財団法人カケンテストセンター

 

透湿性は、「g/m2/h」という単位で表され、これは素材1平方メートルあたり1時間に何gの水分を透過したかを示しています。
数値が大きいほど、透湿性は高くなります。

 

レインウェアに求められる透湿性は?

登山用レインウェアに求められる透湿性は、一体どのくらいなのでしょうか?
私は、「20,000 g/m2/24hrs以上」をおすすめしています。

※「B-1法(酢酸カリウム法)」は「g/m2/h」という単位で表されましたが、市販のものは「g/m2/24hrs」で表されることが多いです。1時間あたりの量か、24時間あたりの量かという違いです。

 

大人一人が1時間あたりに放出する発汗量の目安は、下の通りです。

 

安静にしている時:50g
軽い運動時:500g
登山・ランニングなどの激しい運動時:1,000g
引用:アメトハレ

 

つまり、登山などの激しい運動を24時間続けた場合、24,000gの汗を放出することになります。
レインウェアの表面積はほぼ2m2なので、この汗をすべて処理するには、「12,000g g/m2/24hrs」の透湿度の能力が必要です。
透湿性は生地の劣化に伴い、性能が少しずつ落ちてくるので、「20,000mm g/m2/24hrs以上」あれば安心して長く使えるという考えです。

 

ベンチレーションの有無で大きく変わる透湿性

透湿性は、蒸気(汗)を生地の外に逃がす性質のことですが、生地を通してではなく、服に隙間をあけて直接汗を逃がすという考えがあります。
これを「ベンチレーション」といい、脇の下などにファスナーを設け、服の中が汗で蒸れてきたときに、このファスナーを開けて汗を逃がします。

 

隙間をつくって直接的に汗を逃がすので、ムレ対策としてはかなり効果的です。
蒸れが気になる人は、この「ベンチレーション」がついたモデルをおすすめします。
ただし、雨風が強い状況では、外からの雨が浸入してくるので、そのような状況では使えません。

 

まとめ

今回は、登山用レインウェアの「防水性」と「透湿性」について解説しました。
まとめに移ります。

・登山用レインウェアの最も重要な機能は「防水性」と「透湿性」
・耐水性・はっ水性・漏水性などの総称を「防水性」といい、なかでも重要なのは「耐水性」。
・耐水性は「耐水圧(mm)」で表され、1cm四方の水柱を立てたときに、生地がどのくらいの水圧(高さ)まで耐えられるのかということを表している。
・レインウェアに求められる耐水圧は「20,000mm以上」。
・透湿性は、「g/m2/h」で表され、素材1平方メートルあたり1時間に何gの水分を透過したかを示している。
・レインウェアに求められる透湿性は「20,000 g/m2/24hrs以上」。
・蒸れが気になる人は「ベンチレーション」付きがおすすめ。

耐水性試験
最新情報をチェックしよう!