登山やハイキングの途中でザックが揺れたり、肩が痛くなったりしたことはありませんか?
ザックにはたくさんのストラップが付いていて、細かな調整がきくようになっていますが、それらをきちんと使えていないとザックの機能性は大きく損なわれてしまいます。
ザックを正しく背負えているかどうかで安全性や快適性は大きく違ってきます。
今回は、登山ザックの正しい背負い方・調整方法について解説していきます。
登山ザックの各部位の名称
まずは、登山ザックの各部位の名称と使い方について説明していきます。
雨蓋
ザックの上部にはザック本体の口部を覆うように、雨蓋が設けられています。
雨蓋には通常外側と内側にポケットがあり、色んな細かいものが収納できるようになっています。
また、雨蓋とザック本体の間にはウェアなどを挟み込むこともでき、急に荷物が増えたときなどは便利です。
容量が少ないザックや軽量化を図ったザックでは、この雨蓋が省略されることもあります。
トップベルト
ザック本体の上部に取り付けられたベルトで、外から締めることでザック内の装備を圧縮することができます。
雨蓋とザック本体の間にウェアなど装備を挟むときは、このトップベルトで固定したりします。
コンプレッションベルト
ザックを外から締めることでザック内を圧縮し、ザック内の装備を固定する役割があります。
また、サイドポケットに差し込んだトレッキングポールなどを固定する役割もあります。
トップスタビライザー
スタビライザーは安定させるものという意味です。
ザック上部とショルダーハーネスに取り付けられたトップスタビライザーは、ザックを身体に寄せることで安定させる役割があります。
ショルダーハーネス
ハーネスは、身体に装着するベルトを意味します。
ショルダーハーネスは肩から脇にかけてザックを固定するものです。
チェストハーネス
左右のショルダーハーネスを胸のあたりでつなぎとめるのがチェストハーネス。
チェストハーネスを装着すると、ショルダーハーネスが身体にぴたりと固定され、より安定します。
背面パッド
背中にかかる荷重を分散させる役割があります。
また、クッション性をもつので背負い心地を向上させてくれます。
容量が少ないザックや軽量化を図ったザックでは、省略されることもあります。
ウエストハーネス
腰に巻きつけるように装着するウエストハーネス。
一定以上の重さのあるザックでは、肩と腰にかかる理想的な比重は、肩:腰=3:7と言われています。
多くの荷重がかかるウエストハーネスはザックの中でも特に重要なパーツです。
テープ
平たいひも状の部分をテープとよびます。
ザックの至る箇所に使用されていて、負荷がかかる部分ほど太いテープが使用されています。
軽量化を図ったザックでは、このテープの幅が細かったり、細引きが使用されていたりします。
バックル
テープ同士を連結させたり、長さを調整したい部分で使用されたりします。
ラダーロック
簡単に長さを調整したい部分で使用されます。
ショルダーハーネスの下部などに設置されていて、このラダーロックによりスムーズに調整ができます。
身体にあった登山ザック選び
そもそもザックを正しく背負うには、自分の身体にあったサイズのザックを選ぶ必要があります。
サイズ選びで最も大事なのは、「背面長」です。
背面長とは、その名の通り背面の長さのことで、通常は第七頚椎骨(首の後ろの一番大きく出っ張る骨)から両腰骨の上段部分を結ぶ水平な線までの長さを示します。
参考:グレゴリー
この背面長をもとにザックのサイズを選ぶのですが、背面長が合っていないと、ザックと身体の間に隙間ができたり、窮屈な部分が出てきたりするので注意が必要です。
背面長を1人で測るのはなかなか難しいので、お家で家族に測ってもらうか、店で測ってもらいましょう。
グレゴリーでは背面長を測る専用の機器があるので、そちらを使用するのもいいかもしれません。
ザックのモデルによっては背面長だけでなく、ウエストハーネスやショルダーハーネスのサイズも選べるものがあります。
グレゴリーのバルトロなどがその例です。
また、最近では背面長を調整できるザックも多くあります。
さらに女性の方は、女性用に設計されたザックもあるので、そちらも試してみましょう。
登山ザックの背負い方・調整方法
ここからは、登山ザックの背負い方・調整方法について説明していきます。
背負い方と同時に、ザックの詰め方も非常に重要ですので、こちらの記事も合わせてご確認ください。
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登山ザックを背負うときは、基本的に下からハーネスを固定していき、最後にザックを身体に近づけるという順番になります。
さきほど説明した通り、肩と腰にかかる理想的な比重は肩:腰=3:7なので、より比重のかかる腰の位置を決めてから肩の方を調整すればフィッティングがうまくいきます。
具体的な順番は以下の通りです。
①ウエストハーネス、②ショルダーハーネス、③チェストハーネスを固定して、肩と腰付近にあるスタビライザーでザックを身体に近づけるイメージです。
フィッティングに関しては、こちらのページが参考になります。
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よくあるトラブル「肩が痛い」
ここからは、ザックを背負ったときによく起こるトラブルの解消法について説明します。
よくあるトラブルとして「肩が痛い」というものがあります。
歩いているうちにショルダーハーネスが肩に食い込んで、肩が痛いなあと感じることがあります。
原因をいくつか挙げてみたので、1つずつ見直してみましょう。
①荷物が重すぎる
まずは荷物が重すぎることが考えられます。
はじめは心配になって色んなものを詰め込みたくなりますが、慣れてくるとどれが余計なアイテムかが少しずつ分かってきます。
装備をもう一度見直して、本当に持っていくべきか、他のアイテムで代替できないかを考えてみましょう。
また、より軽いアイテムに買い替えるのも有効な手段です。
②荷物の重さとザックがあっていない
ザックには最大積載重量というものが設定されていて、詰め込める重さというものが決まっています。
これを上回って詰めこむと重さがうまく分散されず、肩などに重みが集中してしまいます
スーパーのビニール袋に重いものを入れたとき、持ち手が手に食い込む現象を思い出してもらええると分かりやすいかもしれません。
最大積載重量を守って、重さを分散させましょう。
③詰め方が悪い
ザック内に隙間があるとザック内が揺れ、その揺れが肩に負担をかけます。
また、ザックの重心は背中の近くに重いものを配置すれば、身体が揺さぶられることなく安定します。
これは、身体の重心の上に荷物の重心がくるためです。
逆に身体の重心から遠くに重いものを配置すれば、身体は揺さぶられ肩にも負担がかかります。
④ザックのサイズが身体にあっていない
ザック選びで一番大事なのは「背面長」です。
この背面長をもとにザックのサイズを選んでいくわけですが、そもそもサイズが合っていなければ、どんなに頑張ってフィッティングしても身体とザックの間にすきまができたり、窮屈な箇所がでてきてしまったりします。
その結果、肩に痛みがでてしまうケースもあるので、サイズ選びは慎重に行いましょう。
⑤腰に比重がかかっていない
一定以上の重さのあるザックでは、肩と腰にかかる理想的な比重は、肩:腰=3:7です。
つまり、腰への比重がうまくかかっていないと、その分肩への比重が大きくなります。
腰に比重がかからない原因の1つとして、ウエストハーネスの高さがずれていることがあります。
ウエストハーネスは、ウエストハーネスの縦幅の中心が、腰骨の上端にくるように装着するのが基本です。
ウエストハーネスの位置が上や下にずれると、腰に比重がかかりにくくなり、肩に痛みが出る場合があります。
容量の小さなザックや軽量ザックでは、簡易的なウエストハーネスで揺れを防止する役割しかもたないものもあります。
この場合は、腰に比重がかからないので、長時間背負っているとどうしても肩が痛くなることがあります。
その場合は、腰回りにタオルを巻き、上からウエストハーネスで押さえてやれば肩への負担は軽くなります。
⑥チェストハーネスを装着していない
チェストハーネスは小さいですが、とても重要なパーツです。
チェストハーネスは、胸の前で留めることによってショルダーハーネスを固定し、揺れを最小限にしてくれます。
よくチェストハーネスを装着しておらず、歩くたびにザックが揺れている人を見かけます(特に下り)。
この揺れが肩に少しずつ負担をかけることも考えられます。
まとめ
まとめに移ります。
・登山ザックを背負うときは、①ウエストハーネス ②ショルダーハーネス ③チェストハーネス ④スタビライザーというように下からハーネスを固定していき、最後にザックを身体に近づける。
・肩と腰にかかる理想的な比重は肩:腰=3:7。
・肩が痛くなる原因は、「荷物が重すぎる、「荷物の重さとザックがあっていない」、「詰め方が悪い」、「ザックのサイズが身体にあっていない」、「腰に比重がかかっていない」、「チェストハーネスを装着していない」など。