登山ザックの選び方|適切な容量ってどれくらい?背面長とは?

登山には3種の神器と呼ばれものがあり、ザック、登山靴、レインウェアがそれに該当します。
これらのアイテムは登山を安全に快適にするために必須なので、数ある装備の中でも重要視されます。
ですから、選ぶときは自分にあったものを慎重に選びたいですよね。
今回は、ザックの選び方について解説します。

 

登山ザックの必要性

まずは、登山ザックの必要性について説明します。
街でよく見かける普通のデイパックではだめなのでしょうか。
デイパックでも登山できないということはありません。
ただ、登山ザックと比較すると安全性と快適性が大きく違うので、おすすめはできません。
では、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。
登山ザックのメリットは大きく3つあります。

 

①荷重を身体全体に分散できる
②揺れが圧倒的に少ない
③撥水・防水加工がなされている

 

①荷重を身体全体に分散できる

まずは、荷重を身体全体に分散できることです。
デイパックは通常、ウエストハーネスがなく肩のみで背負うようになります。
一方、登山ザックはウエストハーネスがあり、肩のみでなく腰にも比重がかかるようになっています。
一定以上の重さのあるザックでは、肩と腰にかかる理想的な比重は、肩:腰=3:7と言われています。
つまり、登山ザックとデイパックでは、そもそも比重がかかる部位が違うのです。
また、登山ザックは背面パッドが設けられていて、背中にかかる負担も分散されるようになっています。

デイパックデイパックの背面システム
登山ザックの背面システム

 

②揺れが圧倒的に少ない

次は、揺れが圧倒的に少ないことです。
登山ザックはハーネスやスタビライザーが備えられているため、身体に完全にフィットし、歩行時の揺れを感じにくくなっています。

 

③撥水・防水加工がなされている

登山ザックの多くは撥水または防水加工がなされていることが多く、急な雨が降ってきたときに浸水を防ぐことができます
(とはいえ完全防水以外のザックは、雨が降ったらザックカバーなどで対応することが基本です)。
寝袋や着替え、機器類など水に濡らしたくないアイテムを守ることができます。
このように登山ザックは登山やハイキングをする上で多くのメリットがあります。

 

 

それではザックの選び方について解説していきます。
ザックの選び方は次の順番ですすめていきましょう。

 

①種類を選ぶ
②容量を選ぶ
③商品を選ぶ
④フィッティング

 

登山ザックの選び方① 種類を選ぶ

登山ザックにはいくつかの種類があります。
厳密に分類はできませんが、ここでは大きく4種類に分けて解説していきます。

 

〇トレッキング用ザック
最も商品数も多く汎用的に使えるザックで、登山道をゆっくり歩くときに用います。
ポケットの数も多く、様々な機能が付与されているので、様々なシーンに対応できます。
しっかりとしたチェストハーネスや背面パッドがついているので、腰、肩、背中にバランスよく荷重が分散され、長時間背負っていても疲れにくい構造となっています。

 

〇クライミング用ザック
クライミングをするときに背負うザック。
クライミングしやすいようにショルダーハーネスは薄いです。
また、全体的に軽量で、ポケットなどが最低限しかついておらずシンプルな構造となっています。

 

〇トレラン用ザック
トレイルランをするときに使用するザック。
チェストハーネスは省略されており、走ったときに揺れないよう身体に密着する構造となっています。
軽量で容量もかなり小さいものが多く、ベストにポケットがついているようなタイプもあります。

 

〇アタックザック
アタックザックとは、その名の通りアタック(頂上を目指す)ためのザックです。
テントや山小屋に荷物やザックをデポしておき、必要最小限な装備だけ詰めて頂上を目指すためのサブザックです。
軽量で容量は小さく、メインバックに詰められるように折りたたみ式となっています。
軽量で使い勝手もよいので、軽登山に使用する人もいます。

 

初めてザックを買う場合や迷った場合は、「トレッキング用ザック」をおすすめします。
最も商品数も多く汎用的に使えて、様々なシーンに対応できるからです。
また、バランスよく荷重が分散されるので、疲れにくく、初心者の方にはぴったりです。

 

登山ザックの選び方② 容量を選ぶ

次に容量を選んでいきます。
こちらも厳密には分類できませんが、ここではトレッキング用ザックを大まかに「大型ザック(50L~)」、「中型ザック(30~45L)」、「小型ザック(~25L)」に分けられます。
それぞれの用途に応じて、容量を選んでいきます。

 

大型ザック(50L~)  テント泊、縦走
中型ザック(30~45L) 日帰り~山小屋泊
小型ザック(~25L)       日帰り・ハイキング

 

山行スタイルに合わせたより細かい分類が知りたい方は、こちらを参考にしてください。
石井スポーツ

 

初めてのザックを選ぶ場合は、「30L前後」の容量を選ぶのがベターです。
日帰りハイクから山小屋泊まで対応できるので汎用性が高いためです。

 

登山ザックの選び方③ 商品を選ぶ

ザックの種類と容量が決まったら、いよいよ商品を選びましょう。
ここからは実際にお店にいって、実際に商品を手に取って見てみましょう
様々な機能があって、見るポイントはたくさんありますが、ここでは5つに絞ります。

 

①出し入れ口
②フレームの有無
③1気室か2気室か
④ベンチレーションシステムの有無
⑤重さ

 

出し入れ口

登山やハイキング中は、食料や水、食器類、タオルなど意外と物の出し入れする機会が多いです。そのため、なるべくスムーズにものの出し入れができて、雨や汚れなどがザック内に侵入しないようなものがよいです。現在、主流なのは以下の3つで、それぞれの長所短所は以下の通りです。

ドローコード
ジッパー
ロールトップ

 

出し入れ口の種類 特徴
雨蓋&ドローコード ドローコードで開閉し、その上を雨蓋が覆っているタイプ。
最もスタンダードなタイプ。
雨蓋と本体の間にアイテムを挟めるので、荷物が急に増えてもある程度対応できる。
故障は少ないのですが、ジッパーよりは出し入れに時間がかかる。
ジッパー ジッパーの利点はなんと言っても、出し入れがスムーズなこと。
ジッパーをさっと開ければ、すぐにザック内にアクセスできる。
短所はジッパーが壊れるリスクがあること、浸水の可能性があること。
また、雨蓋がないので荷物が増えたときに容量以上のものを詰めることができない
ロールトップ 最近、よく見かけるようになったロールトップ。
開口部を数回くるくると折り込んで、バックルで留めるタイプ。
もともと水辺で使用されるドライパック(防水の袋)のアイデアをもとにつくられたもの。
ジッパーなどと比べると防水性に優れている。

 

フレームの有無

ザックにはザックの形を保ち、荷重を分散させやすくするためにフレームが入っているモデルがあります。
一方で、軽量化を図ったザックではフレームが省略されています。
フレームのないザックはパッキングにコツがいるので、初心者の方はフレームが入っていいるものがおすすめです。

フレームありの登山ザック
フレームなしの登山ザック

 

1気室か2気室か

ザックは、本体の空間が1つのものと、2つに分かれているものがあり、それぞれ1気室、2気室と呼ばれます。
2気室のものは、2つの空間に分かれているので、ザックの下に入れている装備を取り出しやすいというメリットがある一方、1気質よりも重くなる傾向にあります。
パッキングが苦手という人や、装備をすぐに取り出したいという人には2気室がおすすめです。

1気室の登山ザック
2気室の登山ザック

 

ベンチレーションシステムの有無

ベンチレーションシステムとは、パック本体と背中の間に空間をつくることで通気性を上げるシステムのことで、現在では多くのザックに採用されています。
夏場など大量に汗をかく状況では、背中に汗がたまりにくく、汗冷えを起こしにくいです。
汗をかきやすい状況で使用することが多い人は、ベンチレーションシステムがあるザックを選ぶのがいいでしょう。

ベンチレーションシステムありの登山ザック
ベンチレーションシステムなしの登山ザック

 

重さ

登山において、「軽さ」というのは正義です。
ただ、軽さを選んでいるということはそれだけ機能を省略しているということでもあります。
例えば軽量なザックは、基本的には1気室でフレームはなし。さらにウエストハーネスも省略というモデルもあります。
このようなモデルは軽い分、身体への負荷は減るという利点はたしかにあるのですが、荷重の分散やパッキングなどが難しい傾向にあります。
最近では普通のザックでも軽量化がかなり進んでいるので、初めてザックを選ぶときは、ある程度作りがしっかりしたものを選ぶのがおすすめです
(30Lザックであれば1kg前後以上のものがおすすめ)。
登山にも慣れて軽量化を図りたいというタイミングで切り替えても遅くないと思います。

 

登山ザックの選び方④ フィッテイング

商品選びで最も大事なのは、ザックが身体にフィットするかどうかです。
どんなに機能性に優れていても、どんなにデザインが気に入っていても、身体にフィットしていないと登山ザックとしての性能を発揮してくれません。

 

特に大事なのは、「背面長」です。
背面長とは、その名の通り背面の長さのことで、通常は第七頚椎骨(首の後ろの一番大きく出っ張る骨)から両腰骨の上段部分を結ぶ水平な線までの長さを示します。
参考:グレゴリー

 

背面長を測定し、その長さに合っているサイズを選びます。
最後にフィッティングして身体に合うかどうかのチェックを行います。
これが最も大事な工程ですので、必ず行うようにしましょう。
フィッティング方法は次の記事を参考にしてください。

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登山ザックはどこで買う

登山ザックはどこで買うのがよいでしょうか。
体格は千差万別なので、どの登山ザックが自分にあうのかは実際に背負ってみないと分かりません。
ですから、ネットであらかじめ候補を絞っておいて、お店でフィッティングして買うのが一番スムーズかと思います。
ネットなどでデザインだけで決めてしまうのはやめておきましょう。
おすすめは登山用品店です。

 

おすすめは、やはり下記のような登山用品店です。
種類も豊富ですし、店員さんも登山専門の知識を持った方が多くいます。

[全国展開]
好日山荘
モンベル
石井スポーツ

[関東エリア]
カモシカ
さかいやスポーツ

(中略)
一方で、大型スポーツ量販店の登山コーナーで買うのはあまりおすすめできません。
品物自体は悪くないのですが、登山用品店と比較すると、どうしても品数が少なく、店員さんも登山専門の知識をもった人が少ない印象です。
引用:ハイカーズ大学

 

登山ザックの使い分け

今回は、初心者の方が初めてザックを買うことを想定し、「30L前後のトレッキング用ザック」をおすすめさせてもらいました。
これは、30L前後のトレッキング用ザックが最も汎用性が高く、使い勝手がいいからです。
30L前後のトレッキング用ザックであれば、日帰りハイクから小屋泊まで幅広く対応できます。

 

ただ、30L前後のトレッキング用ザックも万能ではありません。
テント泊をするのであればやはり大型のザックが必要ですし、近所の里山を歩くには30Lは大きすぎるという場面もあります。
ですから、登山やハイキングをやっていく過程でシチュエーションが広がっていったら、それに合わせてザックも使い分けるのがベターです。
私も実際に、次のように3つのザックを使い分けています。

 

日帰りハイク→20Lの軽量ザック
日帰りハイク、小屋泊まり→30Lのザック
テント泊→60Lザック

 

はじめから自分のやりたい登山スタイルが定まっている人は少ないと思いますので、とりあえずは30L前後のトレッキング用ザックを用意し、必要に応じて他のザックをそろえていくのがいいかと思います。

 

まとめ

今回は、ザックの選び方について解説しました。
まとめに移ります。

 

・デイパックと比較したときの登山ザックの利点は、①荷重を身体全体に分散できる、②揺れが圧倒的に少ない、③撥水・防水加工がなされている
・ザックの選び方は、種類を選ぶ→容量を選ぶ→商品を選ぶ→フィッティングという順にすすめる。
・ザックの種類は、トレッキング用ザック、クライミング用ザック、トレラン用ザック、アタックザックの4つ。
 初めてザックを買う場合や迷った場合は、「トレッキング用ザック」がおすすめ。
・トレッキング用ザックは、容量に応じて「大型ザック(50L~)」、「中型ザック(30~45L)」、「小型ザック(~25L)」に分けられる。
30L前後のものは日帰りハイクから小屋泊まで対応できるのでおすすめ。
・商品を選ぶときに見るポイントは、①出し入れ口、②フレームの有無、③1気室か2気室か、④ベンチレーションシステムの有無、⑤重さの5つ。
・商品選びで最も大事なのは、ザックが身体にフィットすること。
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