ローカットの登山靴で縦走は可能か?

「縦走」と聞くと、どんな装備を想像しますか?
大きなザックにテントなどを詰め込み、足元はハイカットの登山靴を履いて、数日かけながら稜線を歩いていくのを想像すると思います。

 

実際、少し前までは、そのスタイルに歩く人が多かったように思います。
しかし最近では、比較的軽量なザックとローカットの登山靴で縦走されている人も見かけるようになりました。

 

今回は、ローカットの登山靴で縦走は可能か?というテーマについて考察していきたいと思います。
なお、この記事の内容については、一個人の意見として、参考程度にとどめていただければ幸いです。

 

「縦走」とは

まず、「縦走」の定義を確認してみましょう。

 

「登山で、尾根伝いにいくつかの山頂を通って歩くこと。」
引用:コトバンク

 

尾根を伝って、いくつかの山頂を通って歩くことなので、標高は特に関係ないようです。
日本アルプスの稜線歩きなどはもちろん含まれますが、「六甲山縦走」など低山の場合でもたしかに使われています。
また、時間や日数も関係ないようです。

 

ですから、この記事では里山での日帰り縦走から、日本アルプスのテント泊縦走までを含めて考えていきます。

 

ローカットの登山靴は何がある?

つぎに、ローカットの登山靴には、どのような種類があるのかを見ていきます。
カットの高さとソールの硬さで登山靴をおおまかに分類してみます。

登山靴の分類①

赤枠で囲ったものが「登山靴」です。
さらに青枠で囲ったものが「ローカットの登山靴」になります。
ローカットの登山靴は、「ハイキングシューズ」、「アプローチシューズ」、「トレランシューズ」の3種類です。

 

ローカットの登山靴に適したシチュエーション

さきほど分類した登山靴がどのようなシーンで用いられるのかを見てみましょう。
横軸が「移動スピードの速さ(または荷物の重さ)」を示し、縦軸が「路の舗装状況」を表しています。

 

登山靴別の適したシチュエーション

 

登山靴を整理すると次のようになります。

登山靴の分類②

 

上の表を見ると、軽さや足首の可動性は、安定性と保護性とトレードオフの関係にあることが分かります。
「ハイキングシューズ」、「アプローチシューズ」、「トレランシューズ」のローカットシューズは軽く、足首の可動性が大きい分、安定性と保護性に欠けます。
一方で、ミドルカットやハイカットの「トレッキングシューズ」と「アルパインシューズ」は、重く、足首の可動性が低いですが、安定性と保護性に優れています。

 

ローカットシューズは縦走に使用できるのか?

ローカットシューズは軽さと足首の可動性に優れていて、安定性と保護性に欠けることが分かりました。
つまり、軽さや足を軽快に動かせることに重点が置かれる場面で使用されるということです。
具体的に言うと、「軽い荷物」で「おだやかな道」のときです。
下の図で言うと、オレンジ枠で囲った部分のシチュエーションがそれに該当します。

 

上の図を踏まえると、ローカットシューズは次のような縦走に使用できる可能性があります。
いずれも、岩場や雪のある状況を除く比較的おだやかな道を想定しています。

 

・里山の日帰り縦走
・標高2000mまでの小屋泊縦走
・標高2000mまでのウルトラライトなテント泊

 

里山の日帰り縦走であれば、荷物も少ないので、ローカットシューズはむしろ適していると思います。
以前に六甲山縦走に参加したときも、ローカットシューズを選択している人はたくさんいました。

 

小屋泊も荷物を抑えてもっていけば可能でしょう。
ウルトラライトなテント泊は、ベースウェイトを5kg程度に抑えることができれば、ローカットシューズも可能になってくると思います。
実際、そのような縦走を実践されている方もいます。
ただし、荷物が重くなる分、脚力&技術が必要になってきます。

 

これ以上道が悪い場合、もしくは荷物が重い場合は、安定性と保護性の観点から、ローカットで歩くのは難しいと自分が歩くときは判断します。

 

おすすめは「ハイキングシューズ」

では、ローカットシューズの最初の一足としてふさわしいのは、どんな種類のシューズでしょうか?

 

私は「ハイキングシューズ」をおすすめします。
「ハイキングシューズ」はローカットシューズの中でもソールが硬めで溝がしっかりついており、他のローカットシューズと比較して保護性が高いモデルが多いからです。

 

スピードを上げて歩きたい人やより軽快な足さばきを求める人は、「トレランシューズ」という選択肢もあります。
ただ、軽量であるため、その分保護性は低くなるので注意が必要です。
登山靴において、「軽さ」と「保護性」はトレードオフの関係にあることを念頭においておくとよいでしょう。

 

まとめ

今回は、ローカットの登山靴で縦走は可能か?というテーマについて考察しました。
まとめに移ります。

 

・ローカットの登山靴は、「ハイキングシューズ」、「アプローチシューズ」、「トレランシューズ」の3種類。
・軽さや足首の可動性は、安定性と保護性とトレードオフの関係にある。
・里山の日帰り縦走(おだやかな登山道)であれば、荷物も少ないので、ローカットシューズは適している。
・「標高2000mまでのウルトラライトなテント泊(おだやかな登山道)」がローカットシューズで行ける縦走のぎりぎりライン。ベースウェイトを5kg程度に抑えることができれば、ローカットシューズも可能になってくる。ただし、その分の脚力&技術が必要。
・ローカットシューズの最初の一足としてふさわしいのは、「ハイキングシューズ」。ハイキングシューズはローカットシューズの中でもソールが硬めで溝がしっかりついており、他のローカットシューズと比較して保護性が高いモデルが多いため。
最新情報をチェックしよう!